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iPhoneを使った3Dスキャンは仕事に使えるのか

2024.08.10

建築の現場をLiDAR スキャン

オーダー家具を制作する上で現場実測を正確に行うことは非常に重要で、以前から空間を3Dスキャンできたらどんなに楽だろうと思っていました。高額の機材を購入すればできることは分かっていたのですが、今回iPhoneに搭載されている機能を使うことにより、3Dスキャンが簡単にできることがわかったので仕事で使えるレベルなのか実際に使用し検証してみました。

LiDARとは、対応機種は

LiDARとはlight detection and ranging(光による検知と測距)の略でリーダーではなくライダーと読むようです(ずっとリーダーだと思ってました、、)

ようはレーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測して物体までの距離や方向を測定する技術です。iPhoneでスキャンする際にはこのことを理解した上で操作した方が正確にスキャンすることができるので、知識として知っておいた方が良いです。

iPhoneの対応機種は

 iPhone 12 Pro 以降

ですので、そこそこハイスペックのiphoneである必要があります。

Polycam アプリ

今回使用したのはこちらのアプリ、Polycamというもので、最終的にはSketchUpに描き出せることが目的なので対応したアプリを探しました。

初回は無料で何回か使えたような気がするのですが、今となっては分からず、すみません。

現在のところ

1ヶ月で ¥2,200

12ヶ月一括払いだと ¥12,000 (¥1,000/月)

ということになっています。データを書き出すためには課金する必要があるのでとりあえずは1ヶ月の支払いで始めます。

キッチンの設置場所をPolycamでスキャン

今回はマンションの改修工事に伴いキッチンの製作依頼を頂いてましたので、早速現場で試しにスキャンを行ってみました。iPhoneでゆっくり動画を撮影するように、現場をスキャンしていきます。今回スキャンを行ったのはこのような箇所。両サイドが壁でその内うちにキッチンが収まるという採寸にとても気を遣う場所です。

 

スキャンを行うとこのような3DモデルがPhioneのアプリ上に表示されるのですが、これだけですごい衝撃的じゃないですか!アプリ上でぐるぐる回しながら、拡大したり見る方向を変えたり出来ています。

実際の測定値との誤差

上に表示されているショート動画の最後にメジャー機能で寸法を測っているのですが、そこでは壁の内うちの寸法が『2.42m』と表示されています。つまりmm単位だと2420mm。では実際はどうなのか。

写真に入っているのが実際の計測値。ちなみにこのアプリはMy Measures というもので、もうかれこれ10年くらい使っています。こちらも最近はAR測定機能が追加されてきていますが、使っておらず。写真を撮って、写真内に実際にメジャーやレーザー測定器で測った値を手入力しています。

LiDARスキャンとの測定値の差は 

2420-2452で約30mmの誤差、、、。

正直もう少し、僅差でくるかと思ってましたが、、。

Sketch upへの取り込み

弊社では、家具の製作前には必ずSketchUpで3Dモデルを立ち上げるので、こちらのアプリに取り込んだ時の操作性も実用性を判断する上では重要なポイントとなります。

PolycamのアプリからはDAEという拡張子でデータを書き出すことでSketchUpで3Dモデルをインポートすることができます。

動画をご覧いただけると分かりますが、読み込んだだけではメッシュ状になっておりとても分かりづらい見た目になっています。(ガウディみたい、、)

見やすくするために、エッジのスムージング機能を使ってエッジの数を減らします。

Polycamのアプリにはリサイズの機能があるので、書き出し前にスキャンデータを実際の値に近づけてリサイズしています。

現場をスキャンして、iPhone内にDAEデータを保存。AirdropでMacに移してSketchUpにインポート。ここまで5分程度です。

動画の最後に計画中のキッチンの3Dモデルをはめ込んでいますが、計測値を信頼して使用することは出来なくても、イメージを活用する事だけでも有用なのではと思います。

仕事で使えるのか?

この物件以外にも、自宅の部屋をスキャンしてみたり事務所の作業デスクなどをスキャンしてみましたが、寸法はやはりこの程度誤差が出ます(だいたい1%-2%程度)。

パーセントという値でみると十分許容範囲のような気はしますが家具製作の場合はミリ単位の精度が必要ですので、残念ながら測定には使えなさそうです。

でも僕は

このアプリを有償で使い続ける予定です!

例えばこんな使い方をすれば年間 ¥12,000の価値はあるんじゃないかと思うんですよね。

・現場実測の予備的なデータとして
正確な数値で計測することは出来なくても、リサイズ機能でかなり近い数字を拾ってくることは出来るので、後々の確認の為という使い方は出来ると思います。

・自分以外の人に現場の情報を伝える
計測した人以外にスタッフや外注さんに3Dを描いてもらうことも多いので、3Dスキャンデータを見てもうと分かりやすいです

・造作家具の初期段階のプレゼンとして
お客様のお宅に訪問して、3Dスキャンを行って、そのデータに3Dで製作した家具を嵌め込んでプレゼンをするという事に使えそうです

・ボード内のどの位置に胴縁が通っているか
これは実施に役立った事例として、ボードを貼る前の現場で3Dスキャンを行っておくと、家具を取り付ける際にどこにネタがあるのかiPhone上で確認できます。

・遠隔地のお客様には、スキャンをしてもらう
これはお客さまがiPhone proを持っていないとダメですが、これが出来るようになると仕事の幅が広がりそうです。

と、色々考えられます。1年で性能も進化しそうですし、また新たな発見があったらこちらのブログで報告しようと思います。